知っておきたい抗生物質の副作用と危険性 ~長期使用がもたらす健康被害~


 

病院で処方された「抗生物質(抗生剤)」を服用して数日後に体調を崩した、などという経験はありませんか?

今日の病院では、風邪や感染症にかかった際、ニキビの治療など幅広くに抗生剤が処方されています。

しかし、抗生物質とは本来「細菌」の増殖を抑えるための物質です。細菌由来の感染症には有効ですが、風邪などの「ウイルス」由来の感染症には、ほとんど効果はありません。それにも関わらず、「とりあえず」何かしらの薬を処方しようと抗生物質を処方する医療機関が未だに多いのです。

今回は、抗生物質が処方される主な疾患と、副作用、また、必要以上に服用した抗生物質が腸内細菌に与える影響についてなどを説明していきたいと思います。

抗生物質(抗生剤)とは何か

抗生物質が発見されたのは、1929 年イギリスの微生物学者フレミングによる、ペニシリンの発見です。フレミングは、実験中に偶然アオカビがブドウ球菌の増殖を抑える物質(ペニシリン)を産生していること見つけたのです。

そして抗生物質は、1944 年、アメリカの微生物学者ワックスマンにより「ある微生物が産生する物質で、ほかの微生物の増殖を抑える物質」と提唱され、近年では「単にほかの菌の増殖を抑える物質を指すだけでなく、動植物の生理的機能を抑制する物質」なども含めるようになりました。

 

これまで、抗生物質は数千種も発見されており、実際に医療に使われているものは約150 種ほどと言われています。

抗生物質は、主に3つに作用が分類されています。

① 細菌の細胞壁の生合成を阻害するもの

② 細菌を構成するタンパク質の生合成を阻害するもの

③ 細菌の核酸(DNA)の複製を阻害するもの

 

 漫画家、村上もとかさんの作品「JIN - 仁 - 」でもペニシリンがお話に出てきているように、抗生物質はその発見からこれまで、細菌感染症の特効薬として無数の命を救ってきました。抗生物質は、服用したことのない人を見つけるのが難しいほど全世界に普及している薬です。

しかし、その ”大きすぎる” 広がりが、いま世界中で新たな ”病” を生んでいるのです。

 

抗生物質を服用する際に気を付けたいこと

 

気を付けたいこと ① 副作用

 

気を付けたいこと ② 細菌の薬剤耐性

 

気を付けたいこと ③ 腸内細菌への影響

 

 

抗生物質は、風邪、尿路感染症、胃腸炎、食中毒、多くの呼吸器感染症(副鼻腔炎、咽頭炎、肺炎、気管支炎など)、皮膚炎(ニキビを含む)など、幅広く使用されています。

しかし、風邪や肺炎、胃腸炎などは、細菌だけではなくウイルスによる感染の場合もあるのです。ウイルス性の場合、抗生物質ではなく抗ウイルス薬でないと効きません。感染原因を特定せずになんでも抗生物質を服用するのは危険と言えるでしょう。

抗生物質の服用で報告されている主な「副作用」は、胃腸症状(吐き気、下痢、腹痛など)、皮膚症状(かゆみ、湿疹など)、肝機能症状(発熱、だるさなど)、腎機能症状(尿量の変化など)、血液症状(貧血など)、呼吸器症状(呼吸困難など)、神経症状(ふらつき、めまい、痙攣など)です。

病原菌の増殖を抑えるための薬が、こんなにも多くの副作用をおこす恐れがあるのは、それだけ薬効が強いということですよね。

 

また、抗生物質は私たち人間だけでなく人工飼育の家畜などにも使われています。むしろ、家畜への使用の方が多い国もあります。

アメリカでは、使用される抗生物質の7割は家畜に使われています。日本でも、家畜への抗生物質の使用は人への使用の約2.5 倍にもなっているのです。家畜に使用された抗生物質は、食物連鎖を介して最終的には人の体に蓄積されます。

 

 

そして、抗生物質の投与(服用)による、病原菌の「薬剤耐性の獲得」が問題として挙がってきます。

食中毒の代表菌である「腸管出血性大腸菌O157」の出現も、家畜(牛)に投与された抗生物質が原因なのです。

 

牛には、反すう胃を含め4つの胃があります。第一胃には膨大な数の微生物が生息し、硬い草の繊維を分解して消化してくれています。

しかし、近年は家畜に草ではなくトウモロコシが与えられ続け、第一胃の微生物が死滅してしまい、牛が弱り病気にかかりやすくなってしまいました。そこで、抗生物質の投与が行われるようになり、抗生物質の効かない「腸管出血性大腸菌O157」が生まれてしまいました。

このように、薬剤耐性を獲得する菌の出現は、家畜だけではなく人間の腸内でも起こっているのです。

では、抗生物質は私たちの「腸内細菌」へどのように影響しているのでしょうか。

 

人の腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌と呼ばれる菌たちが多種多様に存在し、それぞれの菌が互いに相互作用することで、栄養の吸収や免疫の調節、ホルモン産生など人の健康に貢献してくれています。例えば、胃腸炎の原因菌(悪玉菌)と言われるピロリ菌は、いつも健康を害するように働くのではなく、胃酸の分泌を調節したり、空腹感を脳に伝えるホルモン濃度の調整をするなど、重要な働きをしてくれています。しかし、増えすぎてしまうと胃腸炎の発症につながってしまうため、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が、ピロリ菌が増えすぎないように、バランスを保つようにしてくれているのです。

しかし、この腸内細菌のバランスは抗生物質により壊されてしまいます。

悪玉菌と呼ばれる一種、クロストリジウム・ディフィシルという細菌は、普段は善玉菌により増殖が抑えられていますが、多くの抗生物質に耐性を持っているため、抗生物質により善玉菌が減った時に爆発的に増殖します。これが、クロストリジウム・ディフィシル感染症(偽膜性腸炎)です。

また、尿路感染症や副鼻腔炎の治療によく使われているシプロフロキサシン(商品名クラビットなど)は、たった5日投与しただけでも

腸内細菌のバランスが劇的に変わり、多様性も失われ、その組成比が元に戻ることはほとんどないという報告があります。

 腸内細菌の組成が定まっていない幼児の抗生物質の服用では、将来的に脳の機能障害(自閉症など)や、アレルギーの発症リスクが高まることも報告されています。

 つまり、腸内細菌の多様性が失われることは、アレルギーや消化管トラブル、肥満、免疫異常などの様々な疾患を引き起こすリスクが上がってしまうのです。

  

 

お医者さんによっては、「抗生物質を使いたくない」と相談すると、抗生物質を避けた治療を提案してくれる先生もいます。

例えば、膀胱炎などの尿路感染症では、水をたくさん飲むことで細菌を膀胱から追い出す方法や、ものもらいでは、目にヒマシ油を塗っておくなど、抗生物質を避けられる方法があります。

また、食中毒の際は、日本中毒学会において、活性炭の投与により、胃の浄化を行うことを推奨しています。

 

抗生物質を処方してもらう前に、一度主治医の先生に相談してみましょう!

参考文献・図書

・化学同人 青木健次著「微生物学」

・羊土社 実験医学別冊「もっとよくわかる!腸内細菌叢」

・食べもの通信社 安田節子著「食べものが劣化する日本」

・河出書房新社 アランナコリン著「あなたの体は9割が細菌」