プラスチックの環境問題と健康被害

 

プラスチックの語源は、ギリシャ語で「形づくる」を意味する「plassein」。

 

しかし今日では、柔軟性を持つ合成素材を総称するものとして用いられています。

 

天然素材を含むプラスチックも存在しますが、ほとんどは100% 人工的なプラスチックで、フェノールとホルムアルデヒドを混ぜ、熱と圧力を加えた「ベークライト」というプラスチックがそのはじまりです。

 

 

プラスチックは、ポリマーと呼ばれる化学構造を持ち、そこに様々な化学的要素を加えることで、様々な種類のプラスチックが作り出されます。

 

しかし、このポリマー自体には実用的な価値がほとんどないため、添加剤(有害化学物質)を加えることで、耐熱性・抗菌性・安定性などの特性を加えています。

 

 

プラスチックごみの現状

 

世界でのプラスチックの生産量は年々増加し、同時にプラスチックごみも増加しています。

 

リサイクルもできるし大丈夫なのでは?と、思う方もいるかもしれませんが、次の例を見てください。

 

食用パッケージの例)

生産されたプラスチックの約26% が食品などを入れるパッケージになります。おそらく、ほとんどのパッケージにはリサイクルマークがついていると思います。しかし、実際にリサイクルされるのはたった14% だそうです。それ以外は、多くがごみ処理場にも行くことがなく、地球を汚しているのです。

 

 

ごみ処理がうまく機能していない国々では、ごみのほとんどが海に捨てられています

 

実際、世界中の海では海面・深海などからプラスチックが検出され、さらにプラスチックの地層もできてしまっています。

 

このままでは、2025 年には海には魚よりもプラスチックの方が多く存在する可能性も示唆されています。

 

100% 人工プラスチックは、食べ物などと違い、放っておいても自然には戻りません。

 

劣化などによりある程度は分解されますが、最終的には5mm 以下の粒子(マイクロプラスチック)となり、半永久的(数百年と分解されないため)に残り、地球上に蓄積されていきます。

 

 家庭でも、合成繊維のスポンジの使用や、合成繊維の洋服を洗濯することで、生活排水にマイクロプラスチックが流れ込んでしまいます。

 

 さらに、海だけではなく、プラスチックは大気中にも存在しています。例えば、スペインとフランスの国境にあるピレネー山脈の上空にもマイクロプラスチックがたくさん浮遊していると報告されています。

 

では、これらのプラスチック汚染は我々にどのような影響を与えるのでしょう?↓

 

 

プラスチック汚染が生物に与える影響

 

プラスチックというものが生物にとって一番危険なことは、「プラスチックに化学物質が吸着している」というところです。

 

前述しましたが、プラスチックには様々な添加剤(有害化学物質)が加えられています。

 

それらは、プラスチックに微弱な力で結合しているだけなので、簡単にプラスチックから剥がれ落ちてしまいます。

 

私たちが使っているペットボトルやプラスチック製のお弁当箱からも、化学物質が浸み出しているかもしれません。

 

プラスチックから浸み出した化学物質は、「内分泌かく乱物質(環境ホルモン)」として私たちの体に作用します。

 

私たちの体は、内分泌系のはたらき(主にホルモン)により、恒常性が保たれています。内分泌かく乱物質は、名前の通りその機能を乱すはたらきをします。

 

内分泌かく乱物質は微量でも作用し、その構造が体内のホルモンと似た形をしているため、体は誤ってそれをホルモンであると認識してしまい、本来のホルモンの働きが狂ってしまいます。

 

特に女性ホルモンである「エストロゲン」が影響を受けやすいと言われています。

 

BPAフリーのワナ

 

BPA(ビスフェノールA)は、内分泌かく乱物質として周知されていますが、未だ私たちの身の回りにあふれています。

 

BPAは、トマト缶や缶ビール、レシートなどの表面にコーティングされていて、酸や油、高温にさらされることでより、漏れ出しやすくなります。

 

BPAは、主に皮膚や口から体内に吸収され、若年層の脳の発達障害や、小児ぜんそく、生殖障害などを発症する恐れがあります。

 

最近では、BPAフリーという表示をしている製品もありますが、ではBPAの代わりに何が使われているのでしょうか?

 

それは、BPAとほとんど危険性の変わらない化学物質です。

 

同じビスフェノール類の、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの化学物質で代用されていることが多く、どれも化学構造はほぼ同じで、内分泌かく乱作用があるといわれています。

 

中には、BPAよりも強い内分泌かく乱作用を示すものもあると言われています。

 

水筒などを使う際は、プラスチック製のものでBPAフリーと書いてあるものは、BPA以外のビスフェノール類を代用していないかきちんと確かめることや、ガラス製ステンレス製の水筒を使用することをおすすめします。

 

内分泌かく乱物質(環境ホルモン)はどうやって体内に入る?

 

□ プラスチック製品からの漏出

食品パッケージやペットボトルなどの日用品から浸み出す化学物質を吸い込んでいるおそれがあります。

*特に高温で放置したペットボトル飲料は危険

 

□ 大気中のマイクロプラスチックの吸入

大気中に浮遊しているマイクロプラスチックは、ダイオキシンや放射性物質などの化学物質を吸着しているおそれがあります。

 

□ 食事による生物濃縮

さらに、化学物質を吸着したマイクロプラスチックを海の中で魚などが食べてしまうと、食物連鎖で、魚を食べる鳥や動物などの体内にもマイクロプラスチックが入ってしまいます。

 

最終的に人間の体内にそれらが入るころには、化学物質の濃度もとんでもなく濃くなっているでしょう。(生物濃縮)


 

 

 

 

身の回りにあふれるプラスチック

 

私たちの生活の中で使われているプラスチックを、安定性や強度の違いにより、危険なプラスチックと、比較的安全なプラスチックに分類しました。

 

また、プラスチックに代わる素材をまとめましたので、参考にしてみて下さい。

 

 

さらに一つ一つのプラスチックの性質や危険性について詳しく知りたい方、プラスチックごみ問題を考え、プラスチックフリーに貢献したいけど何から始めたら良いかわからないという方には、NHK出版「プラスチック・フリー生活」という本がおすすめです。

 

プラスチックのガイドラインのような本なので、一家に一冊あると便利だと思います。

 

プラスチック問題の根本的な解決は、プラスチック生産量を減らすことと、ごみ処理技術の発展です。

 

そのためにも、全てをプラスチックフリーにすることはできなくても、自分のできる範囲で身の回りのものを見直してみたり、代替できるものはないかと探してみたり、私たちが今すぐできることはたくさんあります。

 

 

弊社でも、製品のプラスチック使用の削減を今後の課題として取り組んでいきたいと思います。

 

 

参考文献

・NHK出版 「プラスチック・フリー生活」

・AFP BB news 「辺境の山地にもマイクロプラスチック、大気中を浮遊」(2019.4.16)

・J.M.Garcia et al.  “Recyclable, Strong Thermosets and Organogels via Paraformaldehyde Condensation with Diamines.”Science 344(6185): 732-735.(2014)

・The New Plastic Economy: Rethinking the Future of Plastics, p.12

・Ocean Conservancy and McKinsey Center for Business and Environment (2015) “Stemming the Tide: Land-Based Strategies for a Plastic-Free Ocean” 2 Ocean Conservancy and McKinsey & Company, p.11

・J.R.Rochester  “Bisphenol A and Human Health: A review of the literature,” Reproductive Toxicology 42:132-155.(2013)